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【予告&前回の内容】つれづれ・・・散歩道 10/31は...

10年10月28日

 [ラジオスケジュール] 
10月10日大分県旅行会編
10月17日大分県旅行会編その2
10月24日上村松園展
10月31日銀座人形与勇輝展

※上記内容は予定となっていますので、変更される場合がございます。



[10月24日の放送内容]

上村松園展
 
さて芸術の秋、今週は絵を見に美術館へ行きました。東西線竹橋駅から3分ほどのところ、皇居北の丸公園内の国立近代美術館です。

明治時代の後半から現代までの美術作品を展示しています。女流画家の「上村松園展」へ行きました。明治生まれ。京都出身で歌舞伎や古典舞踊などを題材に、和服姿の美人画は有名です。今回の展覧会では初期のものなど発表されていない作品をはじめ、何より観たかった「焔・ほのお」という作品を楽しみに出かけました。実は「焔」という作品は上村松園にとって異色作品なのです。



女性の外見的な美しさばかりよりも、心の奥にある情念というものがどう描かれているのかってすごく興味がありました。

私もいろんな役柄を歌っていく上で最近思うことは、どんなにひどい境遇の人の歌でも最後には歌っている人間が気品というものを感じさせられたらと思うようになりました。
もちろん、なかなかできることではありません。上村松園の絵を見たいと思うのは私の中でそういうこともあったのかもしれません。



私のお目当ての「焔」の本物はすごかった。謡曲「葵の上」に取材したもので、嫉妬に駆られた源氏の年上の恋人六条の御息所が生霊となり、光源氏の正妻葵の上を襲おうとする。

国立博物館が所蔵しているので、何度か見に行ったのですが、いつもどこかの美術館に出展されていて実物を見たことはありませんでした。なので、ポストカードを買い観ていましたが、本物は大きくて六畳の御息所の生霊の等身大のように迫力満点。腰をかがめうつむき加減でこちらを斜めから見るようなまなざし。地面につくほどの長い黒髪をひとつに束ねてほつれ毛を口にくわえた表情は怖いです。

指もよく見ると力が入り激しい感情を見ることができます。白い地の着物にはくもの巣が張った模様に、黄色と紫の藤の花がスーッと描かれている。なんでもこの表情は能面を作る師匠に教えを請い、絵の裏側から白目に金を入れると能面と同じ効果があるというヒントを得たという。髪の毛は足元まで長くたらしていて白い紐で結わいている。口に黒髪をくわえて悔しいようにも見える。怖いようでそうでもなく美しい、嫉妬も昇華されたように突き抜けた美しさがありました。

これは松園が43歳の作品です。あとにも先にもこんな作品はないくらい、それまでの松園の作品は美しすぎるといわれ、そのことから自分の作風に悩み、スランプに陥り苦しんだそうです。この作品を選び、思いのままをぶつけ、その後の作品に、「真善美の極地達した本格的な美人画」と呼ばれる松園スタイルが確立されたといわれています。ある程度自分のスタイルが確立して、更に進歩しようとすると目の前には大きな壁。何となく判るような気がします。



残念ながら「序の舞」次の週からと聞き残念でしたが、芸術って本当に心動かすすごいものですね。興奮さめやらぬ私は、「焔」の情念の余韻に浸りたかったので2階のレストランカフェへ行きました。

なかなか素敵なところで、美術館に行かなくても外からも入れます。現代アート風のモダンなレストラン。白い壁やテーブルに前面ガラス張りで眺めもよくテラスにはガーデニングがあり、リンゴの木が見える。こんもりした丘は江戸城の城跡の方角ですね。皇居ランを楽しむ人が通り過ぎていきます。

グラスワインに鶏のから揚げなどをおつまみにし、私と同じようにシャンパンを片手に、物思いにふける女性の姿があり。まさに、上村松園の絵に出てきそうな雰囲気でしたよ。



◇リンク◇

東京国立近代美術館

千花有黄ブログ「つれづれ...散歩道」: 彼岸花と上村松園

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